失職決定!


 会人になってからようやく半年、そろそろ試用期間も終わって正式採用になるという矢先にその事件は起きた。終業間際、トイレから戻ったところでいきなり始まったミーティングで社長の口から出た言葉。
「この会社は9月13日で解散します。」

がーん!どないせえっちゅうんじゃ。

 活していくためには次の仕事を探さなくてはならない。しかし、当てもないのにそんなにいい話があちこちに転がっているはずもない。銀行の預金残高は残り1000ドルぐらい。来月の家賃とか決定した引っ越しなどですぐになくなってしまう額だ。なんてこった!社会人になってたったの6か月で企業の終わりを体験してしまうとは、運がいいのか悪いのか…。
 にはともあれ敗戦処理は迅速に行う必要がある。せっかく自分の企画で発注までとってきたインターネット・サービスのクライアントに迷惑はかけたくない。一番話の進んでいた雑誌の方にまず電話を入れる。
「例のインターネットの件、出来なくなってしまったんです。申し訳ありません。」
「ええっ?なにかあったんですか?」
「実は今回会社が解散してしまうことになりまして、会社がなくなってしまうんです。」
「これからどうなさるんですか?」
「そうですねえ、どうしましょうか…。」
改めて言われてみれば、何も先の見通しなどはない。プラクティカルトレーニングによってあたえられる労働許可の期間もあと3か月ほどしか残っていないのだ。
「何とかこれからもインターネットに関して 手伝っていただきたいんですけど。」
「えっ?」
「何か仕事がないか心当たりを当たっておきますから、何とか来年の春まで持ちこたえてください。そうすれば本格的に就職のお世話ができると思いますから。」

 んともありがたいお言葉をいただいてしまった。やはり仕事は真面目にやっておくものだ。以前、新聞配達をしていた時に先輩から聴かされたことを思い出す。

「お客と自分を第一に考えて仕事をしろ。いざとなったら会社は守ってくれない。でも、お客に対してしっかり仕事をしていれば、お客がおまえを守ってくれる。自分に対してしっかり仕事をすれば、自分の身を守れるようになる。」

 社のためなどとは一度も思ったことがないのだから、この状況は起きてしまったところで自分自身にとってそこまで大きなダメージではないのだという気になってきた。

 りあえず当面の問題は、今度出演するオペラのチケットを売らなきゃならないということで、困ったなあ。う〜ん混乱している最中なので文章にもまとまりがない。


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