霧の子午線


霧の子午線

監督:出目昌伸

出演:岩下志摩、吉永小百合、玉置浩二、筑紫哲也、ほか
 本を代表する2人の女優(岩下志摩と吉永小百合)の共演とあってかなり期待していたのだが、期待度と完成度は反比例するという言葉そのままに裏切られた。お互いの演技を張り合っていたように見えて、何となく興ざめ。二人ともどこかわざとらしい演技が目立ち、物語に没頭できない。劇中、リラックスした演技で現実感を感じさせてくれたのは意外なことにあの玉置浩二である。安全地帯で出てこなくなったなあと思いきや、こんなところで才能を見せつけている。
 作を読んでいないので何とも言えないのだが、ストーリー展開に難があり、どうしても散漫な感じが拭えない。始まる前に「通常、クローン病で急死することはありません」などというテロップを流してしまうものだから、”意外な結末”なんて大見得を切った肝心のラストがバレバレ。中盤にさしかかったところでなるほど全共闘世代のノスタルジーでつくったなと思い当たった。全共闘世代の人間にとってはこのような描き方でも何か伝わるものがあったりするのだろうが、その他の世代から言わせてもらえば、これは、醜く惨敗を喫した世代のものたちが自分たちの失敗を意図的に美しい思い出へと改悪しようとしたものとしか思えない。全共闘にしかわからない映画を作りたいのであれば、全共闘クラブでも作って自主制作でよい。どうもあの世代をテーマにものを作ると胡散臭い感じになってしまう、と言うのはどこかに何か隠したがっているような態度が見えるからなのだが、隠したってしょうがないでしょう、自分達で言っているほど真面目に革命を目指したりしていたんじゃなくて、何となく周りにながされて大学をサボっていただけだなんて事はもうばれている。本気だったのはトップの連中だけでしょう?
 像やロケに関しては文句はない。海外ロケを行うぐらいだから余程のお金が動いたのだろう、企画段階で有名な女優を二人も使えば、それも一番お金を持っている世代が一番喜びそうな女優と来れば、資金などどこからでも集められるだろう。見事な経営手腕である。
 の映画で観るべきものといえば、やはり玉置浩二だ。この映画をきっかけにして玉置浩二がこれからますます映画の世界に進出して行くことは間違いないと思う。これから先、玉置浩二が出演する映画は要チェックだ。
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