南京の基督

 田靖子の演技は世界レベルの映画でも通用すると確信させてくれた作品。ヌードシーンが美しかったからというだけではない。本当に全編を通して彼女の見せる中国少女、”金花”は美しい。その純粋さ、ひたむきさを余すことなく演じきる。子供のような金花から女としての金花まで、相手役の梁家輝が憎らしくなってしまうぐらい彼女は魅力的だ、いや、正確には彼女の演技が魅力的だというべきだろう。日本人である富田靖子が中国人を演じ、梁家輝は逆に日本人を演じるというこの映画の説明を読んだ時、奇をてらって注目を集めようとするのかと思ったのだが、結果を見てみれば明かである。必要性があってこの配役は決まったのだ。ここで演じられる岡川という日本人の男を演じきれる日本人の俳優はいるかと自問すると、残念ながらいないと答えざるを得ない。苦悩する文士を演じるには今の日本の俳優には苦悩するという回路が抜けているのではないだろうか?かく言う私も苦悩する回路が欠落している一人ではあるのだが……。


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