結論から先に言おう。この映画を観て、私はアイスランドに行きたくなってしまった。旅行嫌いの出不精な私がそんなことを考えるなんて思ってもいなかったのだが、この作品を観たあとの私のなかでアイスランドに行きたいという思いはだんだんと宗教じみたものになってきている。観てからまだ三日なのだが、この映画は後で効いてくる。もはやアイスランドに行きたいではすまされない、アイスランドに行かなくてはならない、否、アイスランドが俺を呼んでいると思うほどなのだ。どこがそんなによかったかなどという質問には「わからない。」と答えるしかない。サブリミナルでも使っているのだろうかと思うほどに洗脳されてしまっている。すべての映像が印象的だったわけではない。別にアイスランドの美しい風景が山ほど出てくるというわけでもない、役者がみんなうまかったとか、そういうわけでもない。もちろん美しい映像は多かったし、遭遇する出来事のなかに面白いものもあった。日本のシーンではテレビ画面と同じ大きさで画面を構成し、アイスランドのシーンからはシネマサイズになるというのもなかなか効果的であったし。途中で出会う葬式コレクターや東洋人をばかにした典型的なアメリカの馬鹿カップル。エンジントラブルで動けないシーンで登場する妖精など、ここぞというところでストーリーにメリハリをつけるあたりはさすがだ。しかし、そういう一部分を取り出してどうのこうの言うことにはあまり意味がない。ラストは別にドラマティックでも何でもない。泣けてくるとか主人公になり切ってしまうとかいうようなそういう単純な感情への訴えかけもない。だから一体自分のどこに浸み込んでくるのだかわからないのだが、静かに、しかし確実に自分の内側に共鳴するものがあるのだ。
アイスランドに行こう。(金があったら)