取り立て


 留したままで払っていなかった、長距離電話の督促が遂に来てしまったので、私はちょっと蒼くなっている。う〜ん。半年ほど前にはまだ職があったので月々250ドルの分割にして毎月払っていける筈だったのだけれど、それからほんの2か月ほどで会社が解散してしまったからたまらない。電話代なんか払っている場合ではないので、結局1回分、250ドルだけしか払っていなかった。大した催促も来なかったので、まあなんとかなるだろうとしばらく放っておいたのだが……。

 日帰ったら留守伝にメッセージが残っている。なんだか高圧的な態度のアメリカ人の声だ。用件も言わないでどこそこに電話をかけろと言う。ピンときた。多分電話代のことだ。まあどうでもいいけどさ、景気の悪そうな声で催促するのはね、ただでさえ景気が悪いのに余計に払いたくなくなってくるじゃないか。

 いうことで、さっそく電話してみる。電話をつないでもらうと、会社の名前も用件も告げずに住所と電話番号を聞いてくる。(こういう場合は通常は教えてはいけません。)で、電話のことかと聞いたら、正確な金額まで知っていたので教えることにした。結局一括で払うしかないということらしい、払っていないのが悪いというのは確かなので、まあ、相手の態度が悪くてもしょうがないんだが、しかしねえ、ちょっとむかついたね。

 ばらく話していたら、怒った声で言うことがすごい。

「おまえの英語はわからない。」

と、こう来るものだから参った。完璧でないのは認めるが、わかるようには話しているはずだ。それが証拠によそでこういう扱いを受けたことはない。これは明らかに嫌味なのだ、ついでに外国人に対する蔑視も含んでいる。アメリカ人を相手に

「おまえの日本語はわからない。」

などと言い放つ日本人はあまりいないとおもうんだがね、まあ、日本でも東南アジアの人に対しては同じような事を言うようだから、程度の低い人間は自分より下だと思う連中に対してこういう傲慢な態度をとるというのは洋の東西を問わないようだ。

 鹿と言い争っても時間の無駄だし、金を借りている状態で払わなかった人間が蔑まれてしまうのは当然なので、そういう場面で、そいつの品性の低さが見えてきてもそれは仕方のないことだ。月曜日に一括で1450ドルを支払うことにした。

 かし、その後で本当に今のは電話代の取り立てを依頼された会社なのかという疑問がでてきた。たとえば引っ越した際のゴミの中から電話代の請求書を見つけて、悪党がかけてきたという可能性だってあるのだ。このぐらい用心深くなくてはこんな街で生活などできない。

 かさず電話会社の方に電話をかける。中年の黒人女性らしき声の受付が電話にでた。さすがである。こちらの電話会社もずいぶんと態度が悪いものだったが、最近はかなり良くなった、わざわざ資料を調べてくれて、どこかの取立専門の会社に依頼したこと、その会社名から連絡先まで教えてくれた。これで疑問は解決したので、安心して支払うことにした。

 かしまあ、これで残高は350ドルぐらいになってしまう。かなりつらいところだな。むかつく相手なんだが仕方がない。しかし、もうちょっと口のきき方というのはどうにかならないものかな、それだけ高圧的にやらないとどうしようもない様な人間がこの街には多いのかも知れないけれど……。


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