銃痕問題一件落着


 前からの読者の皆さんはご存じの事と思うが、私の部屋には銃痕らしきものがある。こちらのページを見ていただこうか。窓にまんまるく開いた穴なのだが、これについてはいろいろな意見がメールで寄せられた。
「これは珍しい極小の隕石がぶつかったものだ。」と言う人もあれば、
「やはり銃弾ではないか、なにしろニューヨークだし。」と恐がらせてくれる人もあった。しかし、私を一番納得させてくれたのは次の意見だった。

「これはBB弾を空気銃で発射したものではないか。」

とっても安心できる答えであるし、これなら2枚目のガラスが割れなかった理由もわかるような気がする。思わず腕組みをして深く頷いてしまった。その夜から私がぐっすりと安眠したのは言うまでもないことだ。

 かし、ここはニューヨーク。実は本当にこの疑問に決着が付くのはもうちょっと後のことになる。それはつい1週間ほど前の年の暮れである。その夜私は随分遅くまで起きていた。例によって例のごとく、靴の販売のホームページをああでもないこうでもないと修正していたのである。いい加減疲れてきてそろそろ切り上げようかと思っていたときである。突然窓の外で乾いた連続音!

「パパパパパパパパパパパパパン!!!」

音の質は爆竹に似ているが、鳴り方が違う。そう思ったとたんにサイレンの音、怒鳴り合う人の声、そして、猛スピードで駆け抜けていく何種類かの足音。おそるおそる窓に近づいて外の様子をうかがうと、何人かの黒人の少年達を警官が追いかけている最中だ。窓を開けたらちょうどそのタイミングで警官が叫んだ。
「フリーズ!」
生でこの有名なフレーズを聴くというのはなかなか嫌なものだ。ただでさえ自分にとっては因縁の深い「フリーズ」を、まさか引っ越したばかりのこの部屋で聞く羽目になるとは思いもしなかった。

 章だけではにわかに信じられまい、ということで写真も用意した。さて、存分に見てくれたまえ。これは私の部屋の窓から撮ったものだ。

 かし、それにしても拍子抜けなのは周りの住人の反応だ。こんな事は日常茶飯事と言わんばかりの態度である。何しろみんなわいわい表に出てきて楽しそうにくっちゃべってるんだから恐れ入る。周りがこんな調子だと、こっちもかえって妙な落ちつき方をする。たいしたことねーやってんでそのまま熟睡してるんだから。まあ、俺はどんな状況でも眠らなかったことはない奴だから、特別どうという事はないんだが。

 にもかくにもこれで私の疑問は解消した。あれは隕石でも空気銃でもなく、ただの本物の銃痕であるという事だ。一般に流通している小口径の拳銃だと意外と威力は弱いらしいので、理屈にも合う。とまあ、そういうわけで、メールをいろいろと送ってくださった方々、ありがとうございました。とりあえず疑問は解決しましたんで報告しておきます。結論としては、やっぱりここもブロンクスだったということになるんでしょうかね。戸締まりが気になる今日この頃です。


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