家計の苦しいなかで、突然引っ越しを決めたのには訳がある。さらに10/15〜11/14の分に当たる家賃を、前の部屋の大家に払わずに出ていくのにも訳がある。実はこの大家、相当なクセ者だったことが判明したからだ。
新しい部屋を紹介してくれたのは、以前私の住んでいたアパートの管理人だったリッチー夫妻で、彼等があのアパートを出てここに移ってきたのは大家の不正に気がついたからだったという。ある日、なかなか家賃を払えないでいるメキシコ人の奥さんに出会って、家賃の支払いのことについて話しをした時のこと、彼女の口から出た値段が自分の知っている値段より100ドル程高かった。おかしいと思ったので、部屋に戻って台帳を調べて見たところ、台帳の金額と彼女が実際に払っている金額が違っている。すぐに大家のところへ電話をかけた。
「一体これはどういうこと?」
問い詰めるリッチーさんに大家が答えることには
「余計な詮索をするとあんたも追い出すからね。」
翌日には台帳などの、会計に関する資料を出せと言ってきたらしい。
会計に関しても胡散臭いと思ったので、資料をすぐには渡さず、弁護士に渡して全てのコピーをとり、税務署に問い合わせたところ、税務署に提出している書類の金額とも大きな差があることが判明した。
「こんな所で管理人をしていたら犯罪の片棒をかついでいるようなものだ。」
と思ったのですぐに部屋をさがした。丁度ユダヤ人で信用のおける大家のところに部屋があり、それがこのアパートだったという訳だ。
ところが話しはこれだけで終らなかった。引っ越しが終ってからしばらくして電話料金の請求書を見て夫妻は愕然とした。そこには信じられないような金額が表示されていたからだ。見たことも聞いたこともない国への国際電話がかけられた事になっている。日付を見ると、部屋を移ってから電話の切り替えがまだ完了していない間の通話になっており、その後、あの悪徳大家の生まれ故郷がその国だという事が判明するに至ってリッチー夫妻の怒りは爆発した。税務署の件ではいずれ間違いなく国や州から支払い命令が下ることは目に見えているが、それとは別に告訴することにした。管理人をしていた時の資料が役に立つ。裁判所に例の悪徳大家を引っぱり出して吊し上げるのは11月6日、リッチーさんはその日が楽しみでならないという。
そういうこともあって、今回の私の引っ越しは慎重に行われた。家賃の催促に来る大家には徹底的に居留守を使った。今月分の家賃を払わないことについては全く問題はない。なぜなら保証金として前払いした1カ月分があるからだ。保証金は通常払い戻してもらえるものなのだが、この悪徳大家は絶対に返さない奴なので、保証金を家賃に充てることにしたというわけだ。
来週の頭には郵便局への住所変更の確認と電話が使用不能になっているかどうかを確認する必要がある。それらの確認が終って、14日きっかりに鍵を返すことにしよう。こういう悪徳大家にはしっかり賠償金を支払ってもらいたいものだ。